赤味噌(豆味噌)と大陸系のお味噌
他の地域の味噌と比べて様々な特徴を持つ愛知の赤味噌(=豆味噌)。なぜこんなにも多くの特殊性を持つのか、製造者の方々すら正確には把握できていなかった。
そこで、発酵食品についての概説書や研究書を読んで調査を続けた。すると、意外な発見があった。
なんと愛知の赤味噌は、朝鮮半島の「テンジャン」や中国の「トウチ」との類似性が指摘されているのだ。
つまり愛知の赤味噌は日本のオーソドックスなお味噌ではなく、むしろ大陸系のお味噌に近いことになる。
テンジャンの作り方
テンジャンは大豆に火を通して軽く潰し、“メジュ”と呼ばれる塊を作るところから製造が始まる。
メジュ(Wikipediaより)
メジュは温かい部屋に置かれ、その間は空気中の枯草菌による発酵が進む。その後、壺・甕の中に塩水とともに詰め込まれ、別の菌による発酵を待つと出来上がり。
テンジャン(Wikipediaより)
テンジャン作りには麹菌が登場しない。一方で、メジュ≒味噌玉と考えると、愛知の赤味噌と作り方自体はとても似ていると言っていいだろう。
トウチの作り方
トウチは大豆を蒸したあと、豆粒を残したまま麹菌を繁殖させてつくる。その麹菌が廻りきった豆粒を天日干しで乾燥させたら完成。
トウチ(Wikipediaより)
豆を潰すか潰さないか、干すか干さないか、に違いはある。ただ、蒸し大豆×麹菌の組み合わせは愛知の赤味噌と共通する要素だ。
旨味成分と火への耐性
テンジャンとトウチ、どちらも強い旨味成分を持っていることで知られている。それは愛知の赤味噌も同じだ。
そして、これらの旨味成分は火に強い。
一般的な日本のお味噌の場合、味噌汁を作るときは最後に味噌を入れるように教わる。熱で香りが飛ばないようにするためだ。
しかし、「テンジャン」「トウチ」「愛知の赤味噌」は違う。最初に入れても良いことになっている。むしろ煮込むことによって旨味が立つ、そういうお味噌と言われている(味噌煮込みうどんや味噌おでんが最たる例)。
このように、愛知の赤味噌と大陸系のお味噌には(若干の違いはあるものの)高い共通性が見られることがわかった。
そうは言っても、「似ている」だけで『愛知の赤味噌のルーツは大陸にある!』と断言はできない。今度は別の側面から探っていこう。