和倉温泉の魅力・歴史・経営とは?和倉温泉観光協会さんに聞いてみた

インタビュー

夜行バスを使って金沢に到着しました。

か、顔が死んでる……久々の夜行バスで体がバキバキです。どうも、Our Local編集長のコフンねこと申します。

 

到着時刻は朝の5:30。今回こんなにも朝早く石川県の中心・金沢を訪れたのは、金沢から電車で約1時間半強、北陸有数の温泉地・和倉温泉に行くためです。

 

石川県の北側、日本海に向かってにゅ~っと伸びる能登半島。和倉温泉はそのど真ん中に所在しています。

日本一とも言われる旅館「加賀屋」や、高級魚「のどぐろ」をはじめとする美食、そして豊富で質の高いお湯……が有名な和倉温泉。

 

そして公式サイトが……

和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合
石川県能登半島 和倉温泉の観光WEBサイト。開湯1200年を誇る “海の温泉” と、世界農業遺産に認定された “能登の里山” の恵みをお愉しみください。

めちゃくちゃオシャレなんです。

 

あぁ……和倉温泉なら夜行バスでバキバキになった体を思う存分癒せそうだ……!

……さも和倉温泉マニアみたいな雰囲気を出している僕ですが、実は和倉温泉には今回初めて訪れます。和倉温泉の魅力も、地域的な特性も全然知りません。

 

そこで、さきほど紹介した和倉温泉の公式HPの運営イベント企画・レンタサイクル……などなど和倉温泉の観光振興を担っていらっしゃる「和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合」さんから様々な情報をお聞きすることにしました。

その前に、一旦温泉「和倉温泉 総湯」に入ってきます!

お風呂から上がって……観光協会さんへ

さっぱりしたところで、和倉温泉の端っこにある「和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合」さんへ!

今回は和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合の平野正樹さまに色々とお伺いしました。

和倉温泉:平野正樹さん
和倉温泉生まれ和倉温泉育ち。金沢で働いていた十数年前、ご両親が協会宛に送った履歴書がきっかけで脱サラし、観光協会での勤務を始める。以降、和倉温泉のまちづくりや観光振興に携わる。

和倉温泉はどうして有名に?

「今回はお忙しい中取材に応じていただきありがとうございます!公式サイトがすごくきれいだったので、是非観光協会さんのお話を伺いたくて……!」

和倉温泉へようこそ!今日はどんな話をしたらいいですか?」

……実は僕たち、和倉温泉について全然知らないんです。まずはどうして現在のように有名な温泉地になったのか教えていただきたいなと思います」

「わかりました!まずそもそも和倉温泉が発見されたのは今から1200年前だと言われています。白鷺がお湯に浸かって休んでいたのがきっかけだったとか」

白鷺ですか!たしかにここへ来る途中も、山沿い川沿いで白鷺をたくさんみかけた気がします」

赤い丸のところで飛んでいるのがです

「つまり、温泉街もむかしは白鷺が生息するような比較的自然豊かな場所だったんですよ。そこから『温泉がある』っていうのでどんどん街が発展していくんですね。もちろん最初は小さな村程度だったみたいですが」

「小さな村!?今じゃ想像できません。何がきっかけでこんなに大きくなったんでしょう」

温泉街らしい建物が並んでいる現在の和倉温泉

「和倉温泉の規模が拡大し始めたのは明治に入ってからでした。皇室の方々がここを訪れられたのがきっかけの一つだったみたいです。それと、もう一つ大きな出来事がありまして……」

「……!?」

「1880年にドイツで実施された万国鉱泉博覧会で、和倉温泉は3位になったんです。いわば温泉のオリンピックで銅メダルを獲得したってことですよ。同時期の国内の温泉番付でも1位を取ったので、それはそれは知名度が上がりました」

「ってことは、和倉温泉の知名度が上がって開発が進んだのは割と最近のことなんですね」

「そうなります。それまでは、今旅館が立ち並んでいるエリアなんて全部でしたから」

「あ!街中で明治初期の和倉温泉が描かれたパネルを見たんですけど、確かに海というか、岬?みたいな感じに見えました」

明治初期の和倉温泉。ほとんどまわりはみたい。

「和倉温泉のほとんどが海で、陸地も岬と島のような場所でした。そんな和倉温泉ですから、埋め立てで開発したエリアも多いんです。今でもかつての海岸線がわかるんですよ?」

「ホントですか……?」

「道沿いに松の木が生えている場所があるのですが、そこが昔の海岸線です」

「あの松が!?てっきり景観のためにあとから植林したモノかと……」

たしかに、海岸線から遠いところにが生えている

全然違います

 

和倉温泉のお湯はなぜ塩辛い?

「実はさきほど和倉温泉『総湯』弁天崎源泉公園(※和倉温泉の中心にある公園)を訪れて和倉温泉のお湯を飲んでみたのですが、ずいぶんしょっぱいなと感じました。あれは一体……?」

飲泉してみた

「和倉温泉の源泉は地下150mのところに湧いています。全国的に見ても源泉が非常に浅いんです。さらに海沿いですから、海水の塩分が含まれるわけです」

「なるほど」

「あのお湯で温泉たまごを作ると中身まで塩分が浸透しますし、和倉温泉のお湯を豆乳にそそぐと……

「???」

豆腐ができあがります

コチラは温泉たまご。全く塩を振っていないのに適度な塩気が。

「(温泉が“にがり”になるんだ……)」

「あれだけ塩分が濃い温泉は中々ありません。泉質にはかなり自信がありますし、湯量もかなり多いんですよ」

「どうやったら湯量の多い少ないがわかるんですか……?」

国が上空からレーザーを照射して調査したところ、地図上が大量の温泉を示す赤色で埋め尽くされたそうで。我々も驚きました」

温泉旅館が並ぶ

「へ~!それと、不謹慎な話なんですが、地震や噴火などの災害で温泉が枯れてしまうようなことはないんでしょうか」

「ないとは言い切れませんが……能登は災害が少ない地域ですから、あまり心配はしていません。2007年に能登半島地震が起きたときも建物こそ被害はありましたが、お湯は大丈夫でしたね」

質の良い温泉がたくさん地下に眠っていて、なおかつ災害にも強いんですね……!」

 

まちづくりと北陸新幹線

「先ほど和倉温泉を散策したのですが、新しい和風の建物オシャレな公園が多い印象を受けました。『景観整備』とか『まちづくり』のような取り組みは最近だといつ行われたんでしょうか?」


ゆるキャラの像が並ぶ「わくたまパーク」

3年前です」

超最近!どんなことをしたんでしょうか?」

「概要だけ言うと、温泉街の電線を地下化し、歩道を広げて舗装し、海の玄関口である港も改修しました。今の和倉温泉駅和倉温泉の総湯の建物もそのとき新しくなったんです」

道路が広く、そして電線が無い和倉温泉

「ふむふむ」

「そのときに『景観条例』も一緒に作りました。とにかく“和風”で温泉街の雰囲気を統一しようと考えたんです」

“和”ですもんね」

「そうですね(笑)。ただ実際に運用されているかという観点では少し微妙なところもありまして……地元の方の民家にまでは踏み込んでいないんですよ」

「強制するわけにもいきませんし……」

「はい。ですから、現状この景観条例はゴテゴテした派手な建物を新しく増やさないようにする役割を担っているわけです。地元の方の生活や新しいお店の開業は妨げたくないので」

「それが3年前ですか。やはり北陸新幹線開業に合わせて……?」

北陸新幹線

そういうことです!よくわかりましたね」

「実際、新幹線開業によってお客さんの数は増えたんでしょうか」

関東からのお客さんは増加しました。でも……関西の方地元の方むしろ減少してしまったんです」

「それは問題だ……」

「どうやらこれは予約の取り方の地域性らしいんですよ。関東の方はかなり早めに旅館へ予約しているのですが、関西の方や地元の方はそこらへんが若干ルーズみたいですね」

「関西の人が直前に電話してきても空き部屋がない、と」

「北陸新幹線の影響が徐々に収まりつつある現在では、関西からのお客さんは戻りつつあります。しかし地元の方の客足はまだ遠のいていますね」

大阪から和倉温泉まで直通の便もある特急「サンダーバード」

地元の方が減るとどうして困ってしまうんですか?どんな人が来ようと売り上げは変わんないんじゃ……」

少子高齢化日本全体の人口減少で、将来的にどうしてもお客さんの総数って減っていくと思うんです。そこで、リピーターになってくれる可能性の高い地元のお客さんは重要なんですよ」

「たしかに!リピート率が高ければ将来にわたって収入は変わらないですもんね」

「その通りです。地震が起きてお客さんが減ったときも、真っ先に戻ってきてくれたのは地元の人たちでした。“和倉温泉の経営のありかた”ともかかわってくるのですが、地元の方は本当に大切です……!」

「ちょっと待ってください!その“和倉温泉の経営のありかた”ってどんなものなんですか?」

 

地域全体で経営する!?和倉温泉の仕組みとは

「すごく簡単に言うと、和倉温泉は地元の人たちの手で成り立っているんですよ」

「どういうことですか??」

「実は、和倉温泉の旅館を経営しているのはほとんど地元の人なんです」

「え!〇〇リゾート…みたいな外部の資本のお宿が少ないんですか!?」

「そうです。ほかの温泉地では増えていますよね。外部の資本で成り立っている宿や温泉施設が増えすぎると、温泉に来てくれた方のお金が地元ではなくて外に流れていってしまいます。でも和倉温泉ではそういったケースはかなり少ないんです」

「どうして和倉温泉では少ないんでしょう」

「そうですね……そういえば『総湯』には入ってきたんですよね?」

「はい!」

「その『総湯』を経営している『和倉温泉合資会社』が和倉温泉のお湯の量も質も全て管理しています。そして『和倉温泉合資会社』の出資元は……旅館の経営者さん観光協会地元住民の方々。和倉温泉の管理・経営をしているのは地元の人なんです

「なるほど……地元で一括管理しているから、外の人は入りにくいわけですか」

「はい。つまり、和倉温泉は温泉街全体で経営しているようなもの。外からやってきたお客さんが和倉温泉で使ったお金は、ほぼ全て地元に還元されます

「すごい……!地元で消費されたお金が地元に還ってくるって、なんだか地域経営の見本のようにも思えてきます」

 

和倉温泉の今後の課題は?

「そういった“地域全体で稼ぐ”みたいな仕組みの場合、これからは外国人観光客の方々の誘致が重要だと聞いたことがあります。和倉温泉では外国人向けになにか取り組んでいることはありますか?」

「実は……それが一番の課題なんですよ。少し前まで、インバウンド層の誘致に関しては和倉温泉が全国でもパイオニアだったのですが……

和倉温泉が外国人観光客誘致のパイオニア!?それは初耳でした」

「十数年前、和倉温泉の『加賀屋』さんに、台湾の旅行会社“社員旅行で宿泊したい”とお願いをしてきたんです。加賀屋さんは何年も日本一の旅館の称号を取り続けていたので、“日本一を体験したい!”とのことだったようで」

「十数年前と言うと、外国人観光客数は今と比べてかなり少ない時期ですよね」

“日本のマナーを守ってくれるのか?”“おもてなしがうまく伝わるのか?”などの懸念があって、加賀屋さんも一度は断ったのですが、結局は受け入れることになりました。そしたら……意外とうまくいったそうで」

「(やってみないとわからないってやつだ……!)」

「それからは台湾で和倉温泉の口コミで徐々に広まっていき、今でも台湾からの観光客の方はかなり多くなっています。でも、正直に言うと、最近では……」

課題のほうが大きい、と」

「ご名答です。Wi-Fiの整備お会計のキャッシュレス化など、外国人観光客を受け入れる体制が全然整っていなくて……」

「そうなんですか……」

「もちろん徐々に海外からのお客さんも増えつつはあります。ですが、インバウンド層がかなり増えている金沢と比べてかなり遅れをとっている状態です。一方で、和倉温泉では若い人のアイデアパワーでそういった課題を解決しようとしています」

「え!?若者のアイデアって、こういった老舗の観光地ではあまり取り入れられないようなイメージがあるのですが……」

「最初に触れていただきましたが、例えば公式サイト公式パンフレットは、和倉温泉のことを気に入ってくれた若手のデザイナーチームが作ってくれたものなんです。和倉温泉のPVを作ってくださった映像制作チームもありました」

「あの公式サイトはそんな経緯でできたものだったんですね!」

「そのほかにも、若い人でないと思いつかないようなイベント情報発信が最近ではどんどん盛んに行われています。地元の方の中にはそれらを鼻で笑うような人もいることはいますが、私は大歓迎です」

「失礼ですが、実際に成果は出ているのでしょうか?」

「出てますよ!公式サイトなどを見て来てくださった若い方海外の方は最近とても増加しています。パンフレットと同じ構図や同じポーズで写真を撮ったりとか、新しい楽しみ方も増えているようで……とにかくありがたいですね」

「これまでとは一味違った温泉街になるのかもしれませんね……!」

地域活性化が叫ばれて久しい昨今、色々な考えを取り入れてより良い温泉地になっていければいいな、と思います

 

そうだ、和倉温泉へ行こう

豊富で質の高い温泉を利用し、地域全体で稼ぐ仕組みが整っている和倉温泉。

 

平野さんは「まだまだ課題も多い」とおっしゃっていましたが、3年前のまちづくり整備や地域内外の若年層のアイデアによってさらに素敵な温泉街へと変化しつつある……といった印象を受けました。

 

何より、温泉が気持ちよかったし、温泉たまごは程よい塩味で美味しかった……!

温泉の熱で温まっているベンチ、癒される僕

去り際に見た温泉街には海沿いに連なる高級旅館の姿が。憧れの地です。

のと鉄道の車窓から対岸の和倉温泉の旅館群が見えます

次に和倉温泉を訪ねる際は、夜行バスじゃなくて温泉旅館に泊まりたい……!

(コフンねこ)

タイトルとURLをコピーしました