コロナ時代の飲食店の理想像
先に述べた通り、「在宅7割」の提言によって、オフィス街や駅チカの飲食店は大きなダメージをうけることになる。長い間培われてきた「便利な立地」に基づく飲食店経営モデルはこれをもって崩壊へと向かうことだろう。
そんな時代の飲食店に求められる新たな役割とは。
便利な立地×薄利多売の時代は終わり
オフィス街や駅の近く。勝手に人がやってくるところで営業していれば、とにかく来客数が増える。これが、便利な立地で人を呼び込み、味ではなく価格で勝負する飲食店経営モデルだった。
それも、「在宅7割」で終わる。出勤者が減るとなれば、平日に外出する人の数がグッと減るからだ。血眼になって取り合った「便利なテナント」は価値を無くす。コロナ以前に契約した高い家賃だけが積み重なっていく。
もはや「立地」に価値はない。これからの時代に生き残るのは、わざわざ足を運んででも行きたくなるようなお店ではないか。何もせずとも立地だけでお客さんが来てくれるような時代は終わった。
駅から遠くても、オフィス街から離れていてもいい。味や個性で勝負しているお店であれば、常連客に愛されて評判を呼び、新規客の獲得もできる。
とどのつまり、これからの飲食店に求められるのは「挑戦」と「こだわり」だと思う。立地に頼らず、わざわざ行く価値のあるお店。そういうお店が長く生き残るはずだ。
薄利多売をやめることでブラックから脱却も
これにはさらなるメリットも。常々、飲食業界はブラックであるとされてきた。便利な立地で次々とお客さんを捌く薄利多売モデルは必然的にブラックになりやすい。
しかし、「在宅7割」によって立地や薄利多売が価値を無くすとすれば。味や個性にこだわりを持つ、ゆとりのある飲食店こそが生き残る。
このままテレワークが根付くのならば、飲食業界がホワイト化されていく可能性が高いのだ。
「在宅7割」で飲食業界は死ぬのか
「在宅7割」でテレワークが推進されることで、すでにダメージを受けていた飲食店の多くが致命傷を負う。特に、オフィス街や駅の近くで営業していたお店にとっては大打撃となるだろう。
しかし、捉えようによっては光もある。便利な立地で薄利多売を行って利益を上げてきた飲食モデルが崩壊し、こだわりを持つお店が生き残る。とすれば、業界のホワイト化も夢ではない。
もちろんこれは「3密を避けて大声を発さずに外食をする」“新しい生活様式”が根付くことが前提ではあるものの、味や個性にこだわりを持つお店にとってはかえって売り上げを伸ばすチャンスだ。きちんと対策をとれば、感染症のリスクを低くしながら外食を楽しむことだって可能である。
たしかに、飲食業界の一部は「在宅7割」で死ぬ。それによって職を失う人が出てくることを考えると、100%いいことずくめではない。十分な補償が必要であろう。
それでも、飲食業界全体を未来目線で見つめるとメリットもあるのではないか。業界は間違いなく変化を求められる。その変化は決して悪いことばかりではないはず。
これ以上状況が悪くならないことを祈りながら、飲食業界の動向を見守りたい。