1.プロロ-グ
大阪大学人間科学部1回生のいのもとです。
今回はじめて災害ボランティアに参加しました。
遂行した任務は、お家の床下にもぐり、土台についてしまった土砂を払い、消毒をすること。
私は毎週のようにボランティア活動に参加しているベテランのみなさんと一緒に作業をしました。
2. 生きているなぁ
一日ずっとボランティアの方々と一緒に過ごして、「生きているなぁ」と感じました。
表情、言葉、雰囲気、ふるまい。どれも充実感にあふれていて、みんなやりがいをもってボランティア活動をしている様子でした。
素直な言葉でいえば、みなさんにとってボランティアが趣味であるかのように感じたのです。
①熱をもって
まず第一に、ボランティア活動に対する熱量が高く、ボランティア活動にハマっているように感じられました。それは、より丁寧で負担の少ない復旧作業をするために、みなさんが様々な工夫を凝らしていたからです。
例えば、冒頭に「任務は、お家の床下にもぐり、土台についてしまった土砂を払い、消毒をすること!」と書きましたが……実を言うと、依頼されていたのは土砂を払うところまで。
「市が一回消毒に入ってるから、本来仕事は土砂を払うまでなんだけど、消毒までやった方が優しいでしょう?」
ボランティアの方々のご厚意。なんと、自腹で消毒を行っていたのです。暮らす人にとって本当にためになることを丁寧に行っていたことがわかりました。
他にも、こんな会話が。
「いやぁ、きくちゃん(※)良い道具持ってるんだもん~。きくちゃんの道具見てたら、ほしくなっちゃうんだよ」
※きくちゃん:ベテランのボランティアさん。若い男性。
「おれもきくちゃんの持ってるのと同じの買おうかと思って」
「こうやってねぇ、みんな荷物が増えてくんだよねぇ」
実際の作業風景
「バラちゃんすごいんだよぉ、ね、ほら見せてあげなよタイヤ着てるんでしょ?」
ひじのあたりに黒いアームカバーのようなものを見せてくれました。
「タイヤのゴムチューブなのよ。床下にもぐるだろ。その時に痛くないように作ったのよ」
「そう、長いこと潜ってると痛くなるのよね」
「だから、痛くないようにね自前で」
一緒に作業していく中で、自分のできることを広げ、最善の状態に仕上げるためのこだわりがたくさんありました。
それが、日曜大工や料理、ゴルフなどのために道具をそろえる姿や、自分のスキルを上げるために試行錯誤する姿と重なり、私には趣味への熱量のように感じられました。
床下の泥を落としていく様子
②楽しんで
ボランティアを趣味のように思えた場面は他にもあります。
担当のお宅への出発前、初心者で若者の私たちに、
「君ら床下に潜るんだよね、この人達人だから何でも聞いて!」
「そう!達人だから笑。もぐりって楽しいんだよね~、やみつきになっちゃう」
ケラケラと笑いながら話しかけてくれたり、なぜか写真撮影が始まったり……。まるで遠足の前のような空気感でした。
とにかく、みんな笑顔で作業に向かい、楽しんでいる。それは会話や表情ににじみ出ていました。
作業終了後もボランティアセンターで1時間ほど談笑し、冗談を言い合っていたみなさん。ボランティアどうしもセンターの職員も仲が良く、温かい空間でした。
つまり、趣味のようだと感じのは、ボランティアの方々のすがたが充実感にあふれていたからです。
たくさんの犠牲を強いた災害の上に成り立っているモノではあるけれども、非常に心地よく充実した空間や人間関係がそこにありました。
3. エピローグ
災害ボランティアでは、参加者みんなが復旧に向けて工夫をしていく中で、当たり前に笑いあい、作業を楽しむことができています。
もちろんその背景には災害があります。当然、みなさん真剣に復旧と向き合っています。暮らす人にとって本当に最適なことを考え続けています。でも、そこには笑いあう人々がいました。ふざけあう人々がいました。
非日常の中にも日常がある。
もしくは非日常が、日常の一部になっています。
前提として、災害で失われたモノや不幸があります。だから、災害を機に充実や幸せが生まれていることに抵抗感があり、全く想像できませんでした。こんなことを素直におもっていいのかな?と。
しかし、今回の災害ボランティアへの参加によって、全く認識が変わったんです。災害を機に生まれたポジティブなものが確実に存在する。そのことに向き合い、認められるようになりました!
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