2月:欧米人と日本人の来客数も減り始めた
1月末に大きく売り上げを減らした飲食店でも、2月前半には一部勢いを取り戻していた。
中国人観光客が消えたことで閑散としていた観光地に、日本人の観光客がやってくるようになったからだ。
大規模イベントの自粛が相次いだことにより、行き場を失った人々の足が観光に向いたのだろう。
しかし、その好調も長くは続かない。
日本におけるウイルス警戒の動き
まず、日本でも少しづつ新型コロナウイルスの感染者が確認されつつあった。
1月末からはじまった武漢チャーター便。横浜にクルーズ船が着岸したのもこの時期である。そうなると、日本人でも徐々に外出を警戒する人たちが出てくる。
また、このあたりから欧米人観光客が減少し始めたことも見逃せない。インバウンド層に人気のお店にとって厳しい状況はなおも続く。
こうした流れは、飲食業界全体に少しずつダメージを与えていった。
もちろん、売り上げの減少幅はお店によって異なる。ガクッと下がったお店もあれば、そこまで大きく下がらなかったお店もあろう。
それでも、1月と比べて売り上げが下がったことは間違いない。来客数は徐々に減る一方であった。
割引キャンペーン(『567円』などが話題になった)を打って繁盛したお店もあるにはあったものの、業界全体から見ればそれは「少なくなった客の取り合い」でしかない。また、極端な安売りは自分の首を絞めるだけになってしまう。
北海道と愛知の「第1波」
そんななか、2月の中旬から北海道や愛知県を中心に感染者数が増加。
2月下旬には首相らにより『感染拡大を抑止する重大な局面になる』との宣言が出された。さらに、「全国で一斉休校の措置」が発表され、事態は急激に悪化していく。
3月:「飲食の場」に対する大打撃
3月から始まった一斉休校の措置によって、飲食店における「はたらき方」にも問題が生じ始めた。
「もしも、家族の中に小さい子どもがいたら……」
面倒を見てくれる人が自分以外にいない。とすれば、時短営業や固定シフトの変動を迫られることになる。来る人もいなければ働く人もいない。
当然、売り上げにも影響が出たし、もっといえば従業員の給料にも影響が出始めた。働けない分の給料はカットされてしまう。
警戒が緩み、感染が拡大した3月
3月もなかごろになると、人々の警戒はかえって緩んだ。特に20〜22日の三連休には、勢いを失っていた観光地にもそれなりの人が訪れたはず。
そして、各地で卒業式。中止になってしまった学校の生徒・学生のあいだでも、有志が集まる形で祝賀会が開かれていた。
しかし、この「気の緩み」は3月末になって最悪の結果をもたらすことになる。
今夏に開催されるはずだった東京オリンピックの延期が発表されて以降、東京を中心に感染者数がものすごい勢いで増加を始めたのだ。
まるで、感染者数および死者数が大幅に増えていた欧米諸国と同じ道をたどっているかのように。
この状況を受け、3月最後の週末を控えた27日金曜日。東京都の小池都知事は会見でこう述べた。
「3つの“密”を避けて……」(←これはずっと以前から言われていたことではあるが)
「接待を伴う飲食の場への出入りを控えていただくように……」
ハッキリ言って、これは飲食業界に対する大打撃であった。
飲食業に対する危険視
そもそも、『飲食を共にする』ことが非常に危険視されていたのも事実である。
感染経路が判明している感染者の手記には、「先に感染が確認された人物と一緒にご飯を食べたのが原因だろう」とするものが多い。
また、慶應大附属病院の研修医らが大人数で飲み会を行っていたことがずいぶん批判されていた。
つまり、「特にお酒が登場するような場ではいわゆる『濃厚接触』が起きやすい」との認識が国民のあいだで共有され始めたのだ。
そんな状況下で、感染が拡大する場所として‟飲食”と断言された影響は非常に大きかったのではないか(都知事によって言及されたのは「(夜の繁華街の)接待を伴う飲食の場」であって「飲食店全体」ではないのだが)。
みんなが警戒意識をもっていたところに、公的な機関が「危険だ」と言った。これは、人々が飲食店を利用しなくなる十分な理由になりえた。