「めっちゃトトロだ……!」
ココは山形県米沢市李山地区。トトロのシルエットに似た木々は、米沢駅から約10㎞も離れた農村に位置している。
この木々の連なりは近年「トトロの森」と呼ばれ始め、多くの観光客を集めることとなった。そりゃそうだ、あのトトロに似てるんだから。
実はこのトトロの森、偶然に形成されたのではないという。
トトロの森ができたわけ
トトロの森を構成する木々
親切にも、地元の方がトトロの森を見るだけのために展望台を整備してくれている。改めて遠目から見ると、めっちゃトトロだ。
少し近づいてみると、この「トトロ」は複数の木々によって構成されていることがわかる。
胴体はケヤキ、耳は杉。ケヤキのモコモコとしたシルエットと、杉の一直線に伸びる姿が奇跡的に重なった結果、トトロになったらしい。
トトロの森は人工の森?
ところで、この森は自然に完成したわけではなかった。具体的に言えば、人工的に植林された結果、トトロの形に育った。もっとも、トトロ型に育つのがすごいんだけど。
なぜ農村にわざわざケヤキと杉が植林されたのか。その理由は、トトロの森の内部に入り込めばわかるという。
行ってみると、そこには小さな祠が鎮座していた。
「李山丹南山神」を守る「鬼の木」
この祠の名前は“李山丹南山神”。江戸時代の飢饉の際につくられたお社で、いわば集落の守り神だ。つまり、「トトロの森」はこの“李山丹南山神”を守る鎮守の森なのである。
さらに言うと、かつてこの鎮守の森は現在のように親しまれていたわけではなかったらしい。どうも、映画『となりのトトロ』の公開以前のトトロの森は「鬼の木」と呼ばれていたとか。
太くたくましいケヤキの胴体に、鋭く伸びる杉の角。たしかに鬼に見えなくもない。
祠を守る森が鬼の形に成長したら。今ではトトロのイメージが強いために「かわいいな~」とか思ってしまう。でも、江戸時代当時にはむしろ信仰・畏怖の対象だったことだろう。