はじめに
2019年10月の台風19号(通称:東日本台風)の際の大雨により、東日本の川沿いの地域の多くが影響を受けました。
被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。
栃木県佐野市でも複数の川が氾濫し、多数の住宅が浸水被害に遭っています。2020年2月時点では、がれきの撤去こそ概ね完了しているものの、住宅の復旧援助はまだまだ必要とのことです。
そんな想いから、被災地支援のハードルを下げることを目的として、旅+災害ボランティアという新しい形にチャレンジしてみました。
災害ボランティアの“犠牲”と“喜び”
こんにちは、大阪大学の坂本樹(さかもと・たつき)です。
僕は災害ボランティアサークルに所属し、全国各地で起こる災害に対し、「ボランティア」の形で関わってきました。詳しくはこちらをご覧ください。
事実、災害はもはや日本中どこでも起こりうる脅威です。僕が大学生になってからも、「大阪北部地震」「西日本豪雨」「台風19号」「台風21号」などなど、数えきれないくらい多くの災害が起こっています。
「おかげ様」というと誰かを傷つけてしまうことになるでしょうか。それでもたしかに、僕には災害をきっかけにして生まれた出会いや喜びがありました。
災害がおこったからこそ行けた場所、出会えた人。
と思うのです。
企画主旨
「旅」を目的とすれば、「災害支援」にも気軽に参加してくれるのではないか?
「旅」が好きな人ならば、「被災地」の魅力にも気づいてくれるのではないか?
そう思って、このツアーを企画しました。
そう考えてもらえたら、また参加したいと思えるのではないでしょうか。
旅テーマ「水とともに生きる」
水。
台風19号では水が猛威をふるった。
河川氾濫・越水の影響で、現在も多くの人が非日常のなかで暮らしている。
一方で、水は私たちの生活を豊かにしている。
そんな『水』についてじっくり向き合う2日間にする。
今回の旅のテーマは、『水とともに生きる』です。楽しい観光のなかでも、なにか学びたい。そういった想いからこのテーマを設定しました。
何をしたの? ―災害ボランティア+観光―
2日間のスケジュール(2020.02.08~09)
【1日目】
◆栃木県佐野市社会福祉協議会にてボランティア
床下にもぐり、建物基礎に付いた泥をはたき落とす。消毒液を散布。
◆佐野市栃木市を観光
佐野ラーメンを堪能
ゲストハウス蔵の街に宿泊
地元の方が通う銭湯(通称 金魚の湯)へ
【2日目】
◆日光市を観光
日光東照宮参拝
災害ボランティア
今回は、10名(男性5名、女性5名)のチームで作業を行いました。災害ボランティアとして具体的に行った活動は、
- 住宅の床下(基礎部分)の泥だし
- 磨いた部分の消毒
です。
事前に登録をしておくと、地元の社会福祉協議会の方々がチームごとに仕事を分配してくれます。
一度浸水すると、水が引いた後に残った雑菌等から建物が腐食してしまいます。水はきれいなものばかりではなく、汚水も含んだ害のあるものだからです。
ここでは作業服に着替え、丁寧にかつ和やかに作業を進めていきます。
休憩は適宜。この日は寒かったので温かいカップスープをいただきました。
作業終了後はみんなで団らん。最後は、にこやかに記念写真。
観光
今回観光したエリアは、
- 佐野市(ボランティア地。佐野ラーメン・さのまる・アウトレットで有名)
- 栃木市(ゲストハウス蔵の街に宿泊。被災当時の話を聞く場面も)
- 日光市(観光地。日光東照宮・華厳の滝で有名)
です。
佐野市のゆるキャラ『さのまる』。
腰につけているのはB級グルメの『いもフライ』、そして頭にかぶっているのが『佐野ラーメン』です。
そんな佐野ラーメンの特徴は、「しょうゆベースの澄んだスープにコシのあるちぢれ麺」。
昔からラーメン店が多かった佐野。昭和初期の人口5万人のまちに160軒近いラーメン店があったそうです。今でもまちを歩いていると無数のラーメン屋に出会います。
ラーメンマップなるものを見てもどこがいいのかわからなかった(多すぎw)ので、一緒にボランティアをしていた方にオススメを聞いてみました。
味は言わずもがな、「最高」でした。
銭湯『金魚の湯』に行きました。
中には金魚の大きな水槽があって、メディアでも取りあげられています。
浸水被害にあったそうで、お話を伺うこともできました。
こちらは徳川家康が祀られている日光東照宮。世界遺産にも登録されています。
参拝と一緒におみくじ!しっかりと大吉を引かせていただきました。わーい。
日光ではこのような看板や井戸をいくつもみかけました。
下野の国、日光連山の奥深くから湧き出る清らかな天然水です(寒さで凍っていましたが……)。
お酒も清らかな水の恵みの一つ。
なかでも栃木の名産『いちご』(とちおとめが有名)とそれをふんだんに使った果実酒は、口当たりもよく美味しかったです。
こちらは『ゆば』入りのけんちん汁。
京都では『湯葉』と書きますが、日光では『湯波』と書くそうで、その違いは、豆乳を煮詰めて表面に出た膜の引き上げ方。
膜を一重で引き上げたものが京都の『湯葉』、二つ折りにして二重に引き上げたものが日光の『湯波』です。
「ゆば」がおいしいのも、豊かな水があるからですね。
参加者の感想
こちらの記事にまとめました。ご覧ください。
※編集注「随時更新します」
やってみてわかった「大きな間違い」と「真実」
旅+災害ボランティア。
もともと、この企画は災害ボランティアに参加するハードルを下げようと思ったのがきっかけです。理由は、被災地支援そのものに堅苦しくつらいイメージがあると思ったから。その難しいイメージを旅によって和らげたかったんです。
そこには最初から大きな勘違いがありました。
『災害ボランティア自体に大きな魅力がある』、どうもそれを忘れていたらしい。
実際に参加してくれた人に話を聞くと、旅ではなく、誰かからの後押しがあるからこそできる災害ボランティアそのものに関心を持ってくれていたようです。また、活動後にも、ボランティアならではの温かい雰囲気に魅力を感じてくれたとのこと。
現地の方も、
「災害が起こってからは、普段よりもずっと人が訪れるようになった。このままボランティアセンターを開いておいた方がいいんじゃないか?」
と、おっしゃっています。災害ボランティアを通して、まちの魅力が伝わりやすくなっているのかもしれません。
これこそが真実です。
ボランティアをしてみようかな、と悩んでいる人に向けて伝えたいメッセージが生まれました。
あとがき「最後まで読んでいただきありがとうございました」
「災害ボランティアをしてみたいけど、なかなか勇気がでない……」
「そもそも、どんなことをしているの??」
「一人では怖い……」
この記事は、そんな学生さんあるいは社会人に向けて書いたものです。
一人でも多くの人が、この記事を通して災害ボランティアの事実を知り、復興について考えてもらえたら。
それだけでなく(そんな堅苦しいことを言いたいわけではなく)、「災害ボランティアはホントに楽しくて前向きなものなんだよ~~」ってことも同時に伝わるといいな。
追記
昨今は新型コロナウイルス感染症が徐々に拡大しつつあります。外出自粛が叫ばれるなか、災害ボランティアを必要とする地域も受け入れに困っているかもしれません(ボランティア受け入れは中止になっています)。
そもそも新型ウイルスの感染拡大だって、ある意味災害のひとつとも考えられます。
助けてほしいのだけれど、助けを求められない。そんな場所もたくさんあるに違いない。
そういう意味でも、「この記事がひとつのきっかけになれば」と思います。