大阪府能勢町。
絵に描いたような日本の原風景が広がるまち。
そんな能勢町には、お米づくりから酒造りを行う酒蔵である『秋鹿酒造』さん(以下敬称略)と、大規模な古墳時代集落遺跡がある。
もちろん、その2つに「歴史的な」つながりはない。でも、根本の部分でつながっている。「お米づくりからお酒をつくる」、これは非常に大きな共通点である。
そこで、大阪府能勢町の『秋鹿酒造』から、古墳時代の日本酒づくりについて考えてみたい。
秋鹿酒造の「農醸一貫づくり」
G20でも提供された
秋鹿酒造の特徴は、なんといっても「農醸一貫づくり」。シンプルに言えば、自分たちが作ったお米で日本酒をつくる。全国でも非常に珍しい取り組みである。
しかも、そのお米づくりが無農薬栽培なのだから驚きだ。さらに、秋鹿酒造では純米酒しかつくっていない。手間暇かけて丁寧な『お酒づくり』が行われていると言えよう。
その結果、仕上がる日本酒は複雑な味を持つようになる。特に、旨味と酸味が強い。昨今のフルーティーな味わいの日本酒とは一線を画す。
この味わいは、2018年のG20大阪サミットの食事会でも提供されるなど、世界的にも評価されているものだ。
無農薬栽培と全量純米生産
先に触れたとおり、秋鹿酒造では日本酒製造に使うお米を自ら無農薬で栽培し、お米と水以外使わない(=アルコール添加を行わない)「純米酒」だけを生産している。
雑草が繁茂し、害虫が大きく成長するのは夏のこと。あたり一面に田んぼが広がる能勢町には、日光を遮る高い建物も高い木もない。炎天下のなか、ひたすら草を抜く。
無農薬ゆえに生態系も豊か
ぼくもこの草むしりを体験させてもらったことがある。誤解を恐れずに言えば、人生のなかでも5本の指に入るくらいはキツかった。
めちゃくちゃ泥まみれ
でも、作業中ふと気がついた。昔はコレが当たり前だったんだよな、と。
現在の資本主義社会では、面倒なこと、キツイことはすべてお金で解決できる。お米が食べたければ買えばいいし、日本酒を飲みたければスーパーで買うか、居酒屋に行けばいい。
農業においてもそれは同じ。手間を避け生産量を増やすためには、機械の導入や農薬の散布が最適解だ。
しかし、かつては違った。
食べたいなら自分でつくる。お米は自ら栽培し、お酒も自分でつくる(酒造法なんてなかったわけだから……)。余ったぶんはそのまま分け与えたり、地域の宴会で消費する。
これはお米や日本酒に限った話ではない。生活のすべてが「農醸一貫」。昔はコレが当たり前……!
つまり、秋鹿酒造の日本酒は、「かつて日本で当たり前だったお米づくり・お酒づくりのありかた」と同じモノなのだ。
ここで気になるのは、「農醸一貫のライフスタイルがどの時代までさかのぼるのか」。
実はこの問いの答えが、同じ能勢町の遺跡のなかに眠っている。